2週間前の土曜日に、で、約束をしていた、その日が、訪れた。
中学時代の同級生からもで、励まされ、テニス仲間からも、「いよいよ土曜日だね」と、
皆、応援してくれた。
8年前、離別した一人娘と、ようやく、会える日が来た。
約束をしてからのこの2週間、その日まで、病気をしまい、事故に遭うまいと、
車の運転を控え、テニスも自粛し、酒も時には、我慢をし、
万全の体制で、今日を迎えた。
どんな顔で迎えてあげればいいのだろう
俺を恨んではいないだろうか、いろんなことが頭をよぎった。
11時45分、チャリで家を出た。
んペダルが、重いと思ったら、充電していた電気自転車のバッテリーを、
もってくるのを忘れた。かなり緊張していたんだな。
でも、初デートで、遅刻はいかんと思い、そのまま、駅へ向かった。
別れた女房とデートの待ち合わせしたときは、いつも、俺が、30分遅れたものだ。
南千住のJR改札口へ着いた。16才の娘らしき姿は見当たらなかった。
待つこと5分、長い髪をなびかせ、ハンドバッグを肩にかけた女の子と、
遠くから、眼が合った。
5メートルぐらいの距離になると、つまづいて、片方の靴が脱げて、
立ち止まってしまった。
思わず、俺のほうから、歩みより、
「大丈夫かい」と
声をかけた。
「久しぶりね」と、平穏な表情で、靴を履きなおしていた。
「靴おおきいんじゃないの」
「最近、5キロやせちゃってさ」
と、会話をしながら、切符を買って、新宿へ買い物に向かった。
山手線に乗りかえると、近くに掛けていた男性が、席を代わってくれて、
2人で並んで座ることができた。
新宿とえいば、娘が生まれる前、女房と、夏の頃、俺の親父にって、甚平を買いに、ISETANへ2人できたのが最後だったな。
そんな思い出話をしてあげながら、目的のファッションブティックへ入った。
エスカレータに乗ると、
「もう身長も全然伸びなくなって、153cm」
「小学校のときは、大きくて、いつも後ろにいたのにね、ママと同じぐらいだ」
「本当、ママと全く同じなの」
3フロアぐらい回って、結局、最初から決めていた、店で、目的の服を買った。
試着室の前にたたずむ、後ろ姿も、女房にそっくりだった。
買い物を済ませ、ロシア料理屋へ案内してくれた。
女房は、あまり口数の多い人じゃなかったが、
娘は、誰に似たのか、会話の途切れることはなく、
次から次へと、よく話す子に育っていた。
小さい頃から、病弱だったのは、今も変わらず、学校は病気で、よく休むようだ。
しかし、強い信念を持ち、大人っぽくて、しっかり者のようだ。
ゆっくり食事をして、帰り道、紀伊国屋の別館で、コミックを買って、いつの間にか、
夕方6時になっていた。
南千住駅で、娘は、バスに乗り込み、笑顔で、手を振り、去っていった。
凍てついたままだった、俺の心は、こうして、娘の8年ぶりの笑顔で、
雪解けしてきた。
まるで、犯罪者が、服役するかのごとく、
自分の一番大切なものを失い、
もどかしさと悔しさと連れ添い、歩んでいこうと決めていた。
しかし、今、俺は、新しい生きがいをもつことができた。
空っぽの心を埋める没頭できるものは無いか、ヤケを起こさず、はめをはずさず石になろう、
そんな俺の8年間の時間と並行し、
娘は、娘なりに思い悩み、せっかく受かった大学までストレートの中学も退学し、
荒れ果てた心を癒してくれる友達を見つけ、
病弱な体と前向きに向き合って、人一倍の努力をし、歩んできたと知った。
小さい頃、どこかへ連れていってあげるといつも
「また行こうね」って
帰り道に、言っていた。
帰宅後、すぐに、メールがきた。
「今日はありがとう、また、行こうね」と。