11月もはや1週間。
忘れていたのが、父の命日。
思えば、3年前のことだった。
やけに、日曜日に、弁当を買っていってやると、
電話で何度も俺に言っていた。
そして、まさか、その日が、
病院以外でオヤジを見る最後の日となったのだ。
あの日、きっと本当は、体調が悪かったのではなかろうか?
電話をしておきながら、
ちょっと用事が入った、遅くなる、などと、
2度3度そんなことを言っては、
俺と会う時間を遅らせているかのようだった。
俺の住む町の最寄り駅のロータリーにようやくバ停ができて、
そこのベンチに、腰掛けていた。
「とんかつ2つだ、キャベツも入っている。1つは今夜、もう1つは、明日の弁当にしろ」
といって、何やらいいたそうな顔して、俺を見ていた。
最後に、
「頑張れよ」
とだけ言い残し、自転車で、自宅へ向かう俺をずっとバス停から見ていた。
あれが最後だった。
2本の足で、外で立っている親父を見たのは。
その後、不治の病との闘病生活に入り、
11月1日に永眠。
死ぬ間際に、半身を起こそうとして、
俺に何かをつぶやいて、ペースメーカーが止まった。
1週間前、俺は、仕事に追われていた。
思えば、オヤジの
勤め先だった会社から、
手放された仕事が今、俺の手元にある。
その仕事に、先週は食い入っていた。
きっと、オヤジが何か、俺に、
「真面目に働け」と檄を飛ばしたかったのかな。
それとも、墓参り忘れてたのを思いださせたかったのか。
今週も忙しい日々が続く。
今、キリンとれたてホップを飲んでいる。
毎年、秋味の後は、これが販売されるようになり、
ビールの銘柄で、季節を知ることができるな。
このビールは、オヤジが死んだときに、新発売だった。
親戚たちで、集まっては、別れを惜しみこのビールで、
悲しんだものだ。
オヤジの勤めた会社から回ってきた仕事で、
今、俺は、とてつもない繁忙期にある。
そして、夜は、とれたてホップで1人ほろ酔いで、タダ眠るだけ。