サダチルシア~sadachilucia’s blog

サダチルシア=サダチル(さだまさし+ミスチル)+パコデルシア

漂流者~甲斐よしひろも還暦

還暦を迎えた。
 
かぐや姫、風、グレープが解散し、
2人組で売れなかったフォークデュオのオフコースが、5人組のバンドになって、ようやく日の目を浴び、
そして、さらに遅ればせながら、
この甲斐バンドも、
「HERO」で、
一躍、お茶の間のファンのハートをつかんだ。
 
そうさな、ちょっと、チンピラっぽい、
大物になりきれないレベルの、
可愛さは、甲斐よしひろの、半ぱさが、人気の秘訣かも。
 
しかし、この「ヒーロー」の次に出た、
「タッチ(感触)」は、
まったく、ヒーローと同じ、サウンドで、曲の構成もほぼ同じ。
自己パクリみたいなお粗末なもんだった。
 
売れるためには、そうするしかなかったのか、事務所の意向か。
 
氷のくちびる
ポプコーンをほおばって
裏切りの街角
など、売れる前から、
名曲はあった。
 
また、テレビドラマの主題歌になった、
漂流者アウトロー)」
は、インパクトもあったし、「タッチ」の不評を払拭する快進撃では?
70年代フォークも終わり、
かつての、フォーク系ミュージシャンが、
エレキギターに持ち替えて、
完全に、ニューミュージックへと時代が変わったという、
その象徴のような曲だった。
 
しかし、そのニューミュージックとやらの位置づけも微妙で、
ただ、叙情派フォークの歌手が、
生きながらえるための、
手段に過ぎなかったのではなかろうか。
 
今となっては、結局、
フォークはフォークで良かったのだといえる。
 
そんな日本の音楽界の中では、
拓郎、陽水、かぐや姫、風、グレープ、に比べれば、
今ひとつの位置づけだが、
息の長いアーチストとなったのは確かだ。
 
片岡義男の小説「スローなブギにしてくれ」が、
おれが、高校2年のとき、
映画化され、ヒットした。
主題歌は、南佳孝だったが、
映画と同名の作品を作って歌っていたが、
やはり、パクリっぽくて、あまりいい気がしなかった。
主演の浅野温子は、
当時、俺の通う上野高校定時制へ通いながら、女優業を成功させつつあり、
職員へ、この映画のヒットのときには、挨拶にきた。
サインをもらっている者も多々いた。
 
まあ、どことなく、オリジナリティーの薄い、
この中途半端さが、
受け入れやすくて、いいのかもしれない。
 
何かの重鎮でもなんでもない。
 
ヒットを飛ばすものの、どこか、征服感がなくて、
どちらかと言えば、身近なヒーローに近くて、
それでも根強いファンを獲得してきたのには、
もちろん、努力も、才能もあるからだろう。
 
俺はでもそんな甲斐の作品の中でも、
高校の同期には今でも、
アウトロー」なんて、呼ばれる、
漂流者が一番好きな曲だ。
 
そう、この曲でいう outlaw は、無法者ではなく、
甲斐の表現では、
漂流者だという。
社会から離脱し、違法行為を犯すような犯罪者ではなく、
世の中の誰もが、
当時バブル景気のピークへ向かう中、
一方で、SOSを叫び始めて、
心のなかで、抱いている、
愛に飢え、
苦しみながら、生きている、共通点があるという、
そんな、この曲の訴えるような、甲斐の作品は、
名曲であり、当時の世相どころか、
今も続いている人々のハートをえぐり出した秀作だと、俺は、思う。