70年代フォーク
四畳半フォーク
字余りソング
など,いろんな呼ばれ方があった時代の,
走り,リーダー,
吉田拓郎氏の引退宣言の報道があった.
俺的には,「かぐや姫」派で,静岡県掛川市つま恋での野外ライブでのジョイントで,吉田拓郎氏の存在を知ったのだが,
赤塚不二夫の天才バカボンでも,ちまちま,よしだたくろう という文字が,マンガ本には出てきたが,その時,小学生の俺にはわからなかった.
バラエティ番組にも登場していた拓郎.
「30になったら,音楽なんかやっていない」
と語っていたが,ラジオでの語り,若いアイドル KinkiKidsらとの音楽番組にもレギュラー出演し,息の長いアーチスト,というか,若い時しか,音楽やライブなんて出来やしないという鬼門を打ち破ったのかもしれない.
ビートルズがたかが,7, 8年で解散していくのを見て,多くの人たちが,バンド活動を生涯続けることなど,無理というイメージを強く印象付けたことだろう.
拓郎氏の楽曲にも
「ペニーレインでバーボン」
といった,ビートルズ関連の言葉を引用の曲がある.
伊勢正三氏もライブのMCで
「先輩たちがやめないものだから...」
という発言があった.きっと拓郎,こうせつもふくまれていることだろう.
そんな拓郎の作品で,俺がもっとも親しんだのは,
1991年発売「détente」というアルバム.
NHKでもアルバム製作のドキュメタリーが組まれ,
収録曲「男達の詩」と,このアルバムには含まれていないが,デビュー曲の「イメージの詩」のレコーディング風景やセッションの風景がテレビ放送された.
「歌」(うた)という言葉を,「詩」という文字で広めたのも拓郎氏の影響力があるかもしれない.
「détente」の収録曲で,俺が一番好きなのは,
「たえなる時に」
だ!
今君は あの人を心から好きですか
愛でないものはあるはずがない
(「たえなる時に」 吉田拓郎 作詞作曲より)
この言葉の重さが,今,ようやくわかるようになった気がする.
拓郎氏とて,45歳で,この作品を書いたわけだ.
この詩の意味を,まことに勝手ながらの解釈しますが,
転用すれば,心の底から,好きなことでないなら,多分うまくいかない.
昭和のベビーブーム,団塊世代の人の言葉.誰もが結婚し,子供をもうけ,成長する経済の波に乗る時代の人.
しかし,時代はかわり,拓郎氏もプライベートでは,二度の離婚を経験していて,結婚と恋愛を同次元に考えるのは不可能であると位置づけているかのようである.
そして,さらに時代は変化し,ジェンダー論が明確に浮上した.
結婚や恋愛や人間関係だけでなく,
心の底から湧き出る愛情のないものは,価値がない.だれも,そんなもの,買ってくれない.
心の底から,この人じゃなきゃダメというぐらいの気持ちでないなら,一緒にいるべきではない.
所得の範囲で出来ることをやっているのではなく,心というものさしで,決めているということを,この「たえなる時に」という曲のメッセージの強さが,今も俺には突き刺さる.
そして,この「détente」というアルバムタイトルは,端的な訳は,
フランス語で,「くつろぎ」ではあるが,「戦争の危機にある二国間の対立関係が緊張緩和する」ことを意味していると,Webにはある.
吉田拓郎氏の30年前の作品が,今起きているロシア,ウクライナの戦火飛び交う世界を脅かす出来事,そして,身近なところで起きている,男女を越えた人と人とのつながり方を,問うているのではなかろうか.
by サダチルシア