松田優作を始めて見たのは、
小学校3年生だったかな。
太陽にほえろという毎週金曜日にやっていた、
刑事ものの代表作だ。
萩原健一が「マカロニ死す」というタイトルで、
通り魔に刺され、殉職から始まったこの、
太陽にほえろの、殉職シーンは、なんといっても、
ジーパン刑事の「なんじゃこりゃ」が最高だ!
生死をさまよう者の思いとはどんなものなのかを、
描いていた。
そのジーパン刑事が、かの松田優作。
背が高く、色が黒く、日本人離れした容姿は、
お茶の間を圧巻した。
太陽にほえろの後は、
ドラマでは、俺たちの勲章で、中村雅俊と共演。
ワイルドの裏側にあるやさしさが、中村のぴりっとしないキャラクターをフォローしていた。
その後、探偵物語では、ルパン三世のようなイメージで、渋谷を舞台に、
ニヒルさと三枚目を兼ね備えた探偵のキャラを演じ、
サダチルもその頃中学三年で、いよいよ大人の世界に興味を持った頃だった。
平行して映画、「蘇る金狼」がヒット。
無口な商社マンが、夜は、ボクシングジムに通い、
ハードボイルドな世界に足を踏み入れ、
フェラーリを乗り回すシーンは、男の憧れだ。
次の作品「野獣死すべし」は、探偵物語の最終回で、仲間が次々を殺されていった復習そしたときの、
あのキャラクターでいったという感じだった。
やがて、サダチルは高校生になり、
好きな女の子にも両想いでも、付き合うことができず、
自分の硬派な男の生き様へと気がつき始めた。
優作の映画で、あまり表にはでなかった、殺人遊戯とかいうのも、
学校さぼって、どこか下町の映画館へ見にいったことがある。
それと自分で指揮をとった、「ヨコハマBJブルース」なんてのもあった。
そして、優作のもうひとつ、注目すべきは、ブルースだ。
原田芳雄の背中をおぃかけ、優作も、俳優の傍ら、ブルースを歌っていた。
しかし、ある意味では、俳優として、何を表現していいのか見つからない時期だったのではないか?
ジーパンデカで、一世風靡した若者が、
映画でも日本ではまれなハードボイルドな世界を作り出し、優作の真似は誰もできないといって
いいぐらい、はまり役だった。
ところが、年齢が40近くにもなると、いつまでも、皮ジャン羽織って、
拳銃持ってる刹那に、本人も本当に自画像とのギャップに、
耐え切れなくなってきたのではなかろうか?
「陽炎座」、「家族ゲーム」いずれも、蘇る金狼とは違うキャラクターだが、
それを超えるものにならない。
NHKドラマ「夢千代日記」での性格俳優への転向もまた、ただのオトナシイ、変わった男にしか見えない。このドラマの吉永小百合主演の映画「華の乱」でも、優作は吉永と恋に落ちる男を演じたが、
どうしても、恋に悩む男も、家庭もった男も、ビジネスで活躍するエリートも越えることのできない自画像があった。
それが、ハードボイルドな優作だ。
どこにもそんな奴は現実的にはいないんだ。
グラサン、皮ジャン、拳銃、バイク、スポーツカーを乗った、男が、
40,50、60、70、まで、
一体どうやって生きていくんだ。
そんな奴が、普通にスーパーに買い物にいくのか?
演技での成功の裏腹に、優作は、現実での妻子ある男として、
どこか、演じきれない世界があった。
サダチルもまた、都会のマンション1人暮らし。
テニスで体を鍛え、音楽で自己表現。
クルマはもうすぐ、ツーシータのオープンカー。
やりたいことを、大人になったらやっちゃいけないのかい?
男の夢、男にしかわからない世界。
なりたい自分になりたいんだ、俺は。